エッジAIで引き出す生成AIの可能性
セッションA:エッジAIを活用した事業創出

【イベントレポート】非IT企業こそチャンス!アイシン × Hailo × Ideinが語る「エッジAIを活用した事業創出」の最前線

2024年12月18日、Tokyo Innovation Baseで開催されたIdein主催イベント「エッジAIで引き出す生成AIの可能性」。 本記事では、その中で行われたセッションA「エッジAIを活用した事業創出」の模様をお届けします。

 

自動車部品大手の株式会社アイシン 大須賀 晋 氏、AIチップのリーディングカンパニーHailo Japan合同会社 小嶋 範孝 氏を迎え、Idein CEO 中村晃一のモデレートのもと、エッジAI技術の具体的なビジネス応用と、その成功の鍵について熱い議論が交わされました。 特に「非IT企業こそチャンス」というテーマのもと、アイシンのような大手製造業がどのようにエッジAIに取り組み、成果を上げているのか、具体的な事例を交えて語られました。

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アイシンとIdeinの強固なパートナーシップ クルマへのエッジAI実装が生み出す価値

セッションの冒頭、アイシンの大須賀氏は、同社がIdeinと2017年から業務資本提携を結び、エッジAI開発のパートナーシップを築いてきた経緯を紹介しました。世界的な自動車部品メーカーであるアイシンが、なぜエッジAIに注目し、Ideinと共に歩んできたのか。その答えは、具体的な協業事例の中にありました。

 

■トヨタ「Advanced Drive」向けドライバーモニターシステム

Ideinとの最初のプロジェクトであり、ドライバーの居眠りや脇見運転をAIが検知し、交通安全に貢献するシステム。 既に製品化され、実際に多くの車両に搭載されており、2021年には米国の「R&D 100 Awards」を受賞するなど、その技術力は高く評価されています。

 

■自動駐車システムにおける歩行者検出・フリースペース検出

駐車時の安全性を高めるため、AIが歩行者や駐車可能なスペースをリアルタイムに検出します。

 

■End-to-End自動運転AIの開発

カメラ情報を入力するだけで、周囲環境を認識し、車両の進むべき経路までを一貫してAIが判断する高度な自動運転技術。 テスラなどが採用するこのアプローチに、アイシンとIdeinも共同で取り組んでいます。

これらの事例は、アイシンの持つ自動車制御技術や品質管理ノウハウと、Ideinの持つ高度なエッジAI技術が見事に融合し、具体的な製品やサービスとして結実していることを示しています。大須賀氏は、「Ideinとの固い関係が、これらの開発を可能にしている」と語りました。

Ideinのビジネスを支えるハードウェア 「aicast」とHailoのAIチップ

続いて、アイシンがIdeinのビジネスのためにハードウェアを提供するという、ユニークな協力関係も紹介されました。 それが、エッジAIカメラ「aicast(アイキャスト)」です。 このコンパクトなAIカメラには、イスラエルのAIチップメーカーHailo社の高性能AIアクセラレータチップが搭載されており、デバイス上で効率的なAI処理を実現します。

AI Cast (blog size)

ここで登壇したHailo Japanの小嶋氏は、2017年設立のHailo社が、AIチップ分野で急速に成長していることを説明。 特に、エッジデバイスでの高性能なAI処理を可能にするチップ技術に強みを持ち、既に300社以上とのプログラム開発実績があるとのこと。

 

■Vision Transformerへの対応(ファミリーマートビジョン)

最新の「Hailo-10」チップでは、大規模言語モデル(LLM)や生成AIの処理もエッジでサポートするロードマップが示されました。

 

■LLM・生成AIへの対応

特に中国市場などでは、Hailoのチップを採用した製品が既に商用化され始めており、その技術の先進性と実用性が証明されています。 監視カメラや車載システム、産業オートメーション、リテールなど、幅広い分野での活用が進んでいます。

 

■グローバルな採用実績

特に中国市場などでは、Hailoのチップを採用した製品が既に商用化され始めており、その技術の先進性と実用性が証明されています。 監視カメラや車載システム、産業オートメーション、リテールなど、幅広い分野での活用が進んでいます。

小嶋氏は、「開発環境の提供も非常に重要であり、我々のチップという“材料”を、アイシンさんやIdeinさんのような企業にうまく“調理”してもらうことで、初めて価値が生まれる」と、パートナーシップの重要性を強調しました。

エッジAI×生成AIの未来 対話AIエージェント「Saya」の挑戦

セッションでは、エッジAIと生成AIを組み合わせた具体的な応用例として、アイシンが開発中のマルチモーダル対話AIエージェント「Saya(サヤ)」が紹介されました。 これは、ChatGPTのようなLLM技術を活用し、ユーザーと自然な対話を行うことで課題解決を支援するシステムです。

清水建設の名古屋支店で実際に導入されている受付システムでは、「Saya」が来訪者と会話し、カメラやマイクを通じて相手を認識。 社内のビーコンシステムと連携して社員の現在位置を把握し、チャットシステムを通じて呼び出しを行うといった一連の業務を自動で行います。

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現在の課題は、クラウドのChatGPTを利用していることによる応答時間の長さ(約3秒)ですが、今後はIdeinと協力し、エッジデバイス上で動作する小規模なLLM(ローカルLLM)を実装することで、応答時間を0.数秒に短縮することを目指しているとのこと。これにより、より自然でスムーズなユーザー体験が期待されます。

大須賀氏は、「AIとデータの力で、あらゆる人が暮らしやすい社会にしたい。Ideinが持つ街のデータ収集・解析技術と、アイシンが持つモビリティの知見を組み合わせ、街全体の人々の行動を理解し、Sayaのようなアクチュエータ(働きかけを行う手段)を通じて社会をより良くしていきたい」と、壮大なビジョンを語りました。

エッジAIビジネス成功の鍵 「評価」の重要性

セッションのQ&Aでは、「エッジAIをビジネスに取り入れて成功するには何が大切か?」という問いに対し、大須賀氏が「評価(評価指標や評価手順)が最も重要」と回答した点が印象的でした。

「データや学習が大事だと言われることが多いが、それは本質ではない。エッジAIは限られたリソースでAIを動作させるため、必ず性能にある程度のトレードオフが生じる。その落ちた性能をどこまで許容できるか、その基準を明確に定めることが非常に重要」と大須賀氏。

例えば「Saya」の場合でも、新しいバージョンをリリースする際には、「会話が途切れないか」 「不自然な応答をしないか」といった具体的な評価クライテリア(基準)を設定し、それをクリアしたものだけを市場に出すというプロセスを徹底しているとのこと。 この「評価」へのこだわりが、実用的なAIソリューションを生み出す上で不可欠であるというメッセージは、多くの参加者にとって示唆に富むものでした。

まとめ 業界を超えた連携が加速するエッジAI活用

本セッションでは、自動車部品メーカーであるアイシンと、AIチップメーカーであるHailo、そしてそれらをつなぎ、エッジAIプラットフォームを提供するIdeinという、三者三様の立場から、エッジAIを活用した事業創出のリアルな現状と未来への展望が語られました。

特に、アイシンのような非IT企業であり、かつ日本を代表する上場企業が、これほど深くエッジAIおよび生成AIの活用に取り組んでいるという事実は、「非IT企業こそエッジAI活用のチャンスがある」というメッセージを強く裏付けるものです。 業界の垣根を越えたオープンな連携と、明確な評価基準に基づく着実な開発が、これからのエッジAIビジネスを成功に導く鍵となるでしょう。

 

当日のセミナーの様子を動画でご覧いただけます。

Ideinが提示するエッジAIと生成AIの融合がもたらす未来を、ぜひ映像でご体感ください。

Ideinが提供する「Actcast」プラットフォームと、それを活用した革新的なソリューションは、多くの企業にとってAI導入のハードルを劇的に下げ、これまで見過ごされてきた現場の課題解決や、新たな価値創造の扉を開くものです。
ご興味をお持ちいただけましたら、ぜひお気軽にお問い合わせいただくか、詳細資料を請求いただき、Ideinのソリューションが貴社のビジネスにもたらす可能性をご確認ください。