エッジAIで引き出す生成AIの可能性
セッションB:建物OSをつくるための挑戦
【イベントレポート】清水建設が挑む「建物OS」とIdeinのエッジAIが拓く未来のビル
2024年12月18日、Idein主催イベント「エッジAIで引き出す生成AIの可能性」にて、建設業界のDXをリードする清水建設株式会社 情報ソリューション事業部 越地 信行 氏が登壇。 「建物OSをつくるための挑戦」と題し、同社が推進する革新的な取り組みと、その中でIdeinのエッジAI技術がどのように活用されているのかが語られました。 本記事では、そのセッションの模様をIdeinの技術に関心のある皆様に向けてお届けします。




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「アップデートする建物」を目指す清水建設のDX戦略 「建物OS DX-Core」とは
セッション冒頭、越地氏は清水建設の事業概要に触れつつ、同社が長年にわたりビル監視システムなどを手掛けてきた歴史を紹介。 その上で、現在最も注力しているのが「建物OS DX-Core事業」であると述べました。 「ビルの中には様々な設備があり、膨大なデータが眠っているが、その多くが利活用されていない。 これらのデータを掛け合わせることで、新たな価値を生み出すことができる」と越地氏。
清水建設が目指すのは、物理的な改修だけでなく、ソフトウェアによっても機能が向上し続ける「アップデートする建物」、いわば「建物のスマートフォン化」です。 この中核をなすのが、]建物内の各種設備やシステムを連携させ、データの収集・分析・活用を可能にするデジタルプラットフォーム「DX-Core」です。
この「DX-Core」に、IdeinのエッジAIプラットフォーム「Actcast」が連携。監視カメラ映像などをエッジで処理・解析し、リアルタイムなデータ活用を実現しています。
清水建設はシステムインテグレータとしての一面も持ちますが、その独自性を強く打ち出すというよりは、オープンな連携を通じて建物全体の価値向上を目指す姿勢が示されました。




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Idein「Actcast」の活用事例 会議室から商業施設まで、建物データを活かす
具体的にIdeinの「Actcast」がどのように活用されているのか、越地氏は二つの事例を挙げて説明しました。
1.会議室利用の最適化
多くのオフィスで課題となる「予約されているのに使われない会議室(カラ予約)」や「会議室の広さと利用人数のミスマッチ」。 Actcastを活用し、カメラ映像からリアルタイムに会議室の利用状況を把握。「見える化」することで、無駄な予約の自動キャンセルや、適切なサイズの会議室への変更提案、さらには空調の自動制御による省エネまでを実現します。 越地氏は、「これは非常にシンプルな事例だが、大学の講義室や病院の処置室など、応用範囲は広い」と述べました。
2.商業施設の賑わい創出(新虎通りエリアの事例)
安田不動産との協業で、複数のビル(オフィスビル、商業施設)における人流データをActcastで計測・分析。 例えば、商業施設内の店舗で来客が少ない時間帯に、近隣オフィスビルのワーカーへクーポンを発行し、来店を促すといった施策を実施。 これにより、建物単体だけでなく、エリア全体の経済活性化を目指しています。 収集された人流データは、今後の店舗レイアウト改善やテナント構成の最適化にも活用されます。 越地氏は「これまでは物理的な改修で賑わいを作ってきたが、これからはソフトウェアでも賑わいを作り出す」と語りました。
これらの事例から、「DX-Core」という建物全体の頭脳に対し、「Actcast」が目や耳となって現場の情報をリアルタイムに収集・解析し、具体的なアクションに繋げている様子がうかがえます。
建物OSにおけるエッジAIと生成AIの可能性 警備から管理までを革新
さらに越地氏は、今後の展望として、エッジAIと生成AIのさらなる活用可能性に言及しました。 特に期待を寄せているのが、建物の「巡視業務」の革新です。
「現在、警備は警備員が、建物管理は管理人がそれぞれ巡視を行っている。将来的には、警備ロボットが収集した映像や音声データをエッジAIで処理し、生成AIがその内容をテキスト化・要約して異常を検知、アラートを上げる。これにより、警備と管理の巡回業務を一台のロボットで統合し、大幅な効率化と高度化が図れるのではないか」と、具体的な構想を語りました。
Ideinの固定カメラとロボットを組み合わせることで、建物の隅々までAIの目を届けることができるという期待も示されました。
建設業界の未来とビルOSの標準化
建設業界のトレンドとして、新築中心のビジネスから、既存建物をいかに長く、賢く使い続けるかという「延命化」へのシフトが挙げられました。 越地氏は、「我々のミッションは、自社で建てた建物だけでなく、世の中にある全ての建物をDXによって延命化させること。 ビルOS事業はそのための重要なアプローチの一つ」と強調しました。
また、質疑応答では、他社が提供するビルOSとの連携や標準化についての質問も出ました。 越地氏は、「既に標準化団体のような協議会ができており、連携の動きは出てきている。実際に、とあるビルOSベンダーとは連携の調整を進めている」と回答。 ユーザーにとっては、メーカーの垣根を越えたデータの相互活用が期待されます。 人流データの収集方法については、「カメラだけでなく、入退館システムや、屋外ではクーポン事業者が持つGPSデータなども複合的に活用し、適材適所で使い分けている」とのことでした。
まとめ IdeinのエッジAIが加速させる「スマートビルディング」の進化
本セッションでは、清水建設が推進する「建物OS DX-Core」という壮大な構想と、その実現に向けてIdeinのエッジAIプラットフォーム「Actcast」が具体的な価値を提供している事例が数多く紹介されました。 会議室の最適化から、エリア全体の賑わい創出、そして将来的な警備・管理業務の自動化まで。 IdeinのエッジAI技術は、建物から得られる多様なデータをリアルタイムに解析し、より快適で効率的、そして安全な空間づくりに貢献しています。 建設業界という、一見するとITとは距離があるように見える分野においても、エッジAIがDXを力強く推進する核となり得ることを示す、示唆に富んだセッションでした。
当日のセミナーの様子を動画でご覧いただけます。
Ideinが提示するエッジAIと生成AIの融合がもたらす未来を、ぜひ映像でご体感ください。