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「EdgeOps(エッジオプス)」とは? AI時代はエッジでのソフトウェア「運用」が企業競争力に差をつける

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ソフトウェアの世界は、新たなサービス・機能を利用可能にする「開発」にスポットライトが当たりやすい反面、その後の継続的な改善に寄与する「運用」には、その光がほとんど当たりません。それは「運用」が単純な維持管理プロセスとして、付加価値を生まないものと誤解されていることが一因に挙げられるでしょう。

しかし、その実態は大きく異なります。継続的なアップデートを前提とするソフトウェアにおいて、「運用」は長期にわたってユーザー価値を高めていく要であり、この地道ながらも重要なプロセスなしには、革新的なAI技術であっても、その潜在能力を完全には発揮できません。

特に「エッジAI」においては、この見落とされがちな領域に光を当て、その価値を再評価すべき時期が到来しています。

エッジAIはその特性上、実世界の現場にカメラなどのエッジデバイスを設置して利用することになるため、ソフトウェアを周囲の環境の変化に応じて常に最適化させていく必要があります。

その一例が、コロナ禍におけるマスク着用の一般化です。エッジデバイスで取得した画像データから、マスクを着用した人の顔を検出・識別する精度を迅速に高めるために、「運用」の重要性が際立ちました。

こうした変化に柔軟に対応できるようにするために注目されているのが「EdgeOps」と呼ばれる新しい考え方です。AIアプリが持続可能で実用的なソリューションであり続けるために不可欠なこの概念を、Idein CTOの山田康之が分かりやすく説明していきます。

目次

  1. 「EdgeOps」とはDevOpsをエッジコンピューティングに適用したもの
  2. EdgeOps実現への高いハードル、「運用=安定的に進化し続けられる仕組み」の認識を
  3. EdgeOpsの実現に「Actcast」が不可欠な理由
  4. お問い合わせ先

「EdgeOps」とはDevOpsをエッジコンピューティングに適用したもの

EdgeOpsとは、エッジAIなどのエッジで動作するサービス・ソフトウェア開発の新しい考え方です。この言葉はまだあまり一般的ではありませんが、ソフトウェア開発に携わる方の中には「DevOps」という言葉を聞いたことがある人も多いと思います。EdgeOpsは、そのDevOpsから派生して生まれた言葉です。EdgeOpsを正しく理解するためには、まずDevOpsについて理解する必要があります。

DevOpsとは、「開発(Development)」と「運用(Operations)」を組み合わせた造語で、簡単にいえば「開発担当と運用担当の壁をなくして緊密に連携することで、柔軟かつスピーディにシステム開発を行う手法」です。ソフトウェアの開発現場において、以前は、ソフトウェアに新機能を追加する開発チーム(Devチーム)と現在稼働している環境でサービスの安定した継続を目指す運用チーム(Opsチーム)に分かれて作業をすることが一般的でした。しかし、DevチームとOpsチームでは課せられているミッションが大きく異なるため、お互いに足を引っ張ってしまうケースがありました。そこで、DevチームとOpsチームの間の対立を解消して、両者を統合して開発していこうというDevOpsの考え方が生まれたのです。

EdgeOpsDevOpsの仕組み(概念図)

DevOpsという考え方は、2007年頃に生まれ、クラウドコンピューティングの普及と共に広がってきました。その背景には、システム・ソフトウェア開発における、要件定義~開発、運用までの一連の工程をあらかじめ決められた順番に進める手法である「ウォーターフォール開発」ではなく、一連のサイクルを細分化し検証と改善を繰り返す「アジャイル開発」や、工程からできる限り無駄をそぎ落として開発する「リーン開発」といった新たな開発手法の広がりがあります。企業の文化や考え方なども含む幅広い概念ですが、現在では、アジャイル開発の実現に不可欠なものとして浸透しています。

さて、DevOpsから派生してできた言葉に「MLOps」というものがあります。これは機械学習(ML)版のDevOpsともいうべき考え方で、機械学習モデルの開発者と運用者が密に連携し、開発・実装・品質保証のフィードバックループを高速化することで、機械学習のビジネスへの適用を効率化する手法です。

今回紹介するEdgeOpsは、それらの系譜に連なるものと言ってよいでしょう。分かりやすく言えば、エッジコンピューティングの概念とDevOpsの原則を組み合わせた概念です。エッジに近いところで運用するソフトウェアは、旧来的なソフトウェア開発の手法では、求められる品質を満たせないと当社は考えています。

エッジコンピューティングにおけるソフトウェア開発は、いかにフィードバックループを速く回して完成度を上げ、柔軟によりよい価値提供を実現できるかが重要です。従来のネットワークから遮断された“組み込み”とは全く違う世界であり、その開発手法のあるべき姿がEdgeOpsだと考えています。エッジで動作するソフトウェアを常にアップデートしていく必要のある現代において、開発と運用は切り離せない概念になっているのです。

EdgeOps実現への高いハードル、「運用=安定的に進化し続けられる仕組み」の認識を

冒頭で述べたように、エッジコンピューティングやエッジAIの分野では、こと「AI開発」「ソフトウェア開発」だけに話題が集中しがちです。ソフトウェアが完成した後にどうやって運用するのかが、あまり考慮されていないのです。

ソフトウェア開発企業もAI開発のすごさをアピールすることは多いのですが、運用のすごさをアピールすることはほとんどありません。なぜなら「運用はあって当たり前であり、付加価値をもたらす部分ではない」と考えている企業や顧客が多いからです。

機械学習は進化が激しく、データによってソフトウェア自体が進化する分野であり、EdgeOpsによる正しい「運用」がまさに重要になります。強調しておきたいのが、「運用」は現状維持の仕組みではなく、安定的に進化し続けられる仕組みであること。要するに、ソフトウェアが稼働している間、ユーザーに常に新たな価値を提供し続けるための役割なのです。

ソフトウェアは“作って終わり”ではありません。特にエッジAIは、環境の異なる様々な現場・空間で稼働する必要があり、その環境の差・変化が激しいため、パフォーマンスを発揮し続けるためには、開発と運用が密に連携する必要があります。

エッジAI活用が拡大するとともに、いかに上手く「運用」するかが、企業の根本的な競争力に直結する世の中になってきていると感じています。しかし、その重要性について理解が十分に広まっていないのが現実です。

EdgeOpsの実現に「Actcast」が不可欠な理由

「運用」の重要性についての理解が広まっていない状況では、運用に係るコストを請求しにくいという問題もあります。しかし、旧来のソフトウェア開発においても、SIerに開発を依頼した場合、SIerは初期開発コストとは別に年額保守費用を請求していました。クラウドコンピューティングの発展によりSaaSが登場しましたが、SaaSは必要なサービスを共通化し、そのプラットフォームの利用料を対価として支払うビジネスモデルです。個別にカスタマイズするよりも、ユーザー全員で本来必要なコストを分割するというモデルなので、コスト的にはとても有利になります。

そして今後、運用コストについては、企業の信頼を維持するセキュリティ面において「マイナスの価値を生ませない」という考え方がますます重要になってきます。IoTではクラウドとの通信を頻繁に行い、MLアプリケーションでは個人情報などのデータがそのデバイスに蓄積されます。もしセキュリティに穴があり、データが漏洩してしまうと、大きなマイナスの価値が生まれてしまうわけです。

しかし、現代のソフトウェアのセキュリティは、アップデートを前提に担保されています。アップデートをせずに放置することが、いかに大きなリスクをもたらすかを、改めて認識する必要があります。スマートフォンなどのモバイル端末でもアップデートが頻繁にありますが、それは新しい機能を追加するというプラスの価値をもたらすためだけでなく、マイナスの価値を生み出さないようにするためでもあるのです。

なお、クラウド環境、つまり制御されたデータセンターで動作するソフトウェアよりも、現実の世界で運用するエッジAIは、環境の変化などの変数が増加します。そうした数多くの変数に柔軟に対応し続けるためにEdgeOpsを取り入れるべきなのですが、DevOpsに比べて変数が多い分、EdgeOpsの実現は簡単ではありません。

私たちIdeinが開発したエッジAIプラットフォーム「Actcast」はまさに、EdgeOpsを実現するためのツールです。Ideinは創業当初からエッジAIに取り組み、5年の歳月をかけて「Actcast」を開発し、2020年にローンチしました。そして現在も日々改良を続けています。「Actcast」もSaaSと同様にエッジAIソリューション開発において必須かつ共通となる要素や機能に特化したプラットフォームサービスのため、EdgeOps実現に必要なコストを大幅に削減可能です。

Actcast_Platform_swcエッジAIプラットフォーム「Actcast」

「Actcast」は、これまでに小売業界をはじめとした多くの現場で採用されていますが、実際の現場でエッジAI端末を安定的に稼働させることの難しさを数多く経験してきました。現実の世界で“動いて当たり前”を実現するためには、裏方であるプラットフォームの存在が非常に重要であることは身をもって知っています。エッジ環境での運用の大変さを誰よりも分かっているからこそ、私たちは高品質なエッジAIプラットフォームの「Actcast」を提供できるのです。

ぜひ、膨大な時間とお金をかけて私たちと同じ苦労をするのではなく、「Actcast」を効率よくご活用いただき、優れたAIソリューションを世に送り出すことで、様々なお客様のお悩みをいち早く解決していただきたいと思います。また、それにより「Actcast」が業界全体の底上げに寄与できることを願っています。

お問い合わせ先

IdeinではエッジAIの社会実装を共に推進いただけるパートナー企業様を随時募集しております。

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『エッジAIの社会実装を加速するには?——Ideinとパートナーが創る次世代エコシステム』

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