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「なぜ売れない?」がわかる棚――AIカメラが解き明かす「買わなかった理由」と、小売業の新たな収益源

Idein note KV (KDDI-LAWSON-ai signage)

人手不足によるオペレーションコストの増大、物価高騰やキャッシュレス決済の負担により激化する価格競争、そして消費者のニーズの多様化——。現在の小売業界は、「商品を仕入れて売る」という従来のビジネスモデルだけでは、持続的な利益成長を描きにくい局面に立たされています。

この厳しい状況を打破するため、自社会員基盤の強化による顧客の囲い込み、デジタルサイネージを活用したコスト削減や、AIカメラを用いた店舗DXに取り組む企業が増えてきました。これらは「守り(コスト削減)」と「攻め(売上向上)」の一石二鳥を狙う有効な施策ですが、実はそこには、さらに大きなポテンシャルが秘められています。

それは、一般的に利益率の低い小売業が、利益率の高い「リテールメディア(広告ビジネス)」を新たな収益の柱として確立することです。

本記事では、Ideinが技術協力し、KDDIが運営する「ローソン高輪ゲートウェイシティ店」での実証実績と、IdeinがAIカメラの導入・運用で蓄積してきた実践知をもとに、デジタルサイネージとAIカメラがいかにして小売現場を「コスト削減」「売上向上」させるのか、そして広告ビジネスの根幹となる「データセラー」へと進化させるのか、その具体的な道筋を3ステップで解説します。

Idein Staff Profile-Ohko-san-2605

目次

【ステップ1】守りのDX:「アナログ作業」を軽減して人件費を削減、スタッフは高付加価値業務が可能に
【ステップ2】攻めのDX:AIが来店客の「迷い」を検知し、熟練店員のように”背中を押す”
【ステップ3】ビジネスモデル変革:メーカーが長年知りたかった「答え」を売る
小売店舗は「商品を売る場所」から「データを生む場所」へ

【ステップ1】守りのDX:「アナログ作業」を軽減して人件費を削減、スタッフは高付加価値業務が可能に

デジタルサイネージの導入にあたって、いきなり高度なデータ活用を計画する必要はありません。まずは「現場のオペレーション課題解決」に主眼を置き、デジタルの足場を固めることから始めましょう。

コンビニやスーパーマーケット、ドラッグストアといった小売現場では、毎週のように切り替わるキャンペーンやフェアに合わせて、膨大な数のPOP用紙を貼り替える作業が発生しています。また、在庫状況や消費期限に応じた値引きシールの貼り付け作業も、人手不足が深刻化する現場においてスタッフの大きな負担となっています。

こうしたアナログなオペレーション運用は、シールの貼り間違いなどの人的ミスや、貼り替えのタイムラグによる販売機会の損失といったリスクを孕んでおり、店舗経営において大きな課題と言えます。

この課題を解決するのがデジタルサイネージです。ネットワークに接続されたサイネージ端末を店頭に設置することで、キャンペーンやフェアの販促物を、本部からリモートで一括配信・変更できるようになります。デジタル化により動画配信にも対応するため、取り扱う商品によっては、従来の画像・文字の販促物に比べて、より大きな販促効果が見込めるでしょう。

同様に、各商品棚に価格表示用のサイネージ端末を設置すれば、紙の値札に代わり、価格や商品情報をデジタル表示することが可能です。本部システムと連携することで、一斉価格変更はもちろん、消費期限が迫った商品の「自動値引き表示」も可能になります。

このように、アナログ作業の負荷をデジタルへ委譲することで、これまで圧迫されていた店舗のリソース配分が適正化されます。深夜や早朝の貼り替えなどにかかる人件費と手間を劇的に削減できるだけでなく、販売機会の最大化により、廃棄ロス削減にも貢献します。さらに、現場スタッフは単純作業から解放され、接客や商品陳列といった「付加価値の高い業務」に注力できるようになるのです。

【ステップ2】攻めのDX:AIが来店客の「迷い」を検知し、熟練店員のように”背中を押す”

現場負荷が軽減され、デジタルサイネージの運用基盤が整ったら、次は「攻め」のフェーズへと移行します。この段階における最大の目的は、サイネージ端末を単なる「販促物の放映モニター」から、AIの“眼”と“頭脳”を持った「接客装置」へと進化させることにあります。

“ステップ1”段階のデジタルサイネージは、あらかじめ決められたスケジュールに従って、一方的に販促物を放映するモニターに過ぎません。しかし、そこに「AIカメラ」を組み合わせることで、従来、実店舗ではブラックボックスだった“棚前の来店客行動”を、あたかもECサイトの行動履歴のようにリアルタイムで捉えることが可能になります。

AIカメラは、AIが撮影映像をもとに「個人を特定しない形」で、来店客の性別や年代といった属性を瞬時に推定すると同時に、棚の前での滞在時間や視線の動き、商品の手取りといった細かな挙動を分析します。

たとえば、特定の商品の前で数秒間立ち止まっている来店客を、AIが「購入を迷っている検討層」として検知します。その瞬間、AIはデジタルサイネージのコンテンツを「その人の背中を押す情報」へとシームレスに切り替えます。

もし、それが若年層であればインフルエンサーを起用した動画を、主婦層であればレシピ提案や節約情報を表示するなど、属性ごとにパーソナライズされた情報を提示することで、迷っている来店客の購買を後押しすることができるのです。

さらに高度な活用として、来店客のより具体的なアクションに呼応したインタラクティブな接客も実現可能です。来店客が棚に手を伸ばし、特定の商品を手に取った動作をAIが検知すると、すかさずその商品の魅力を深掘りする情報や、相性の良いセット商品を提案する「クロスセル」のレコメンド情報、お得なクーポン情報などをサイネージ画面に表示します。

これは、熟練の販売員がタイミングを見計らって「ご一緒にこちらもいかがですか?」と声をかける接客術をデジタルで再現するものと言えます。商品を見ているだけの来店客を購入客へと変えるコンバージョン率の向上や、“ついで買い”の誘発による客単価向上に直結します。

このように、映像をクラウドに送信せず、端末内で高速処理するAI(エッジAI)を用いれば、プライバシーに配慮しながら「実店舗のデータドリブン化」を実現し、確実な収益向上施策を展開することができるのです。

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【ステップ3】ビジネスモデル変革:メーカーが長年知りたかった「答え」を売る

ここまでのステップにより、現場を効率化し、売上を向上させる基盤が整いました。しかし、DXの真の到達点は、コスト削減や既存売上の向上だけではありません。店内に設置したAIカメラが、これまで“ブラックボックス”となっていた来店客行動を詳細なデータへと変換し、店舗そのものを「巨大なメディア」へと変貌させる点にあります。

これこそが、小売業がメーカーに対して高付加価値なインサイトを提供する「データビジネス」への参入であり、昨今注目される「リテールメディア」構想の中核をなすビジネスモデル変革です。

従来、メーカーは新商品開発やテレビCMなどの広告宣伝に莫大な予算を投じてきましたが、その効果検証には常に不透明さが付きまとっていました。小売店から共有されるPOSデータは、あくまで「何が、いつ、いくつ売れたか」という最終的な結果を示すものに過ぎず、そこには「誰が、なぜ買ったのか」、そして「なぜ買わなかったのか」という“購買前のデータ”が完全に欠落していたからです。

ECサイトであれば、ページへのアクセス数、滞在時間、離脱率といった詳細な行動ログから改善策を打てますが、実店舗においてはそうもいきません。商品が棚に並んでからレジを通るまでの間に発生する、来店客の「迷い」や「購入断念」という意思決定プロセスの可視化──これこそが、メーカーが長年切望し、喉から手が出るほど欲していた情報の正体です。

AIカメラは、プライバシーに配慮した形で来店客の挙動をセンシングし、このブラックボックスを解明します。来店客がどの商品カテゴリの前で足を止めたかという「棚前滞在時間」を計測し、その商品に対する潜在的な「関心度」を数値化。さらに、実際に棚へ手を伸ばした「リーチ数(接触回数)」を精緻に捉えることで、商品パッケージや販促映像がどれだけ来店客の興味を惹きつけたかを客観的に評価します。

特筆すべきは、棚前に滞在した客層のうち、サイネージを視聴したにもかかわらず、商品を手に取らなかった(リーチしなかった)層をデータとして取得──離脱率を可視化──できることです。

こうしたデータがあれば、たとえば「サイネージの視聴率は高いが、実際に商品を手に取るリーチ率は低いため、パッケージデザインで損をしている可能性がある」、「棚前滞在時間は長いものの離脱率が高いため、サイネージで流す訴求内容と商品の特徴にズレがあるのではないか」といった、極めて具体的な改善アクション(インサイト)を導き出すことが可能になります。

これによりメーカーは、これまで不透明だった販促効果の“答え合わせ”ができます。つまり、投じた予算に対する成果をデータで裏付けて、効果的な施策へ予算を集中できるということです。このように、売上拡大に繋がる極めて高い付加価値を提供できるからこそ、小売業者はメーカーからデータ利用料や広告費としての適正な対価を得られ、持続可能な新たな収益モデルを確立できるのです。

小売店舗は「商品を売る場所」から「データを生む場所」へ

店舗の「棚」には、これまで見過ごされてきた未活用の資産(データ)が眠っています。それを眠ったままとするか、それともデータ化して新たな収益源とするか──。棚の前に眠っている「情報の宝の山」を掘り起こし、小売ビジネスの構造そのものを変えていく未来は、もうすぐそこまで来ています。

なお、これほど詳細なデータを取得するとなると、「プライバシー」や「導入コスト」を懸念されるかもしれません。しかし、私たちIdeinの技術はこれらの課題を明確に解決しています。

まずプライバシーについては、カメラで撮影した映像そのものをクラウドに送信することはありません。高度なAI技術により、カメラ内部で映像解析を完結させ、「30代の男性(とAI判定した人)が棚Aに手を伸ばした」といったテキストデータ(メタデータ)のみを抽出して送信します。個人を特定できる映像を残さないため、プライバシーに最大限配慮した運用が可能です。

また、コスト面に関しても、高価な専用機材は不要です。安価な汎用デバイスで高度なAIを動作させる技術を持っており、さらに独自プラットフォーム「Actcast」によって数千店舗規模のデバイスを遠隔管理できるため、全店舗への大規模導入を現実的なコストで実現可能です。

実は、ここがリテールメディア成功の分水嶺となります。広告メディアとして成立し、メーカーなどの広告主から出稿を得るためには、広告主が納得するだけの圧倒的な「媒体規模」が不可欠だからです。 低コストで大規模に展開できるIdeinの技術は、単なる実験的なDX施策を超え、店舗を“稼げる巨大メディア”へと進化させます。

IdeinがKDDIと共に推進する、この「AIデジタルサイネージ」の取り組みにご興味をお持ちの企業様は、ぜひお問い合わせください。

 

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